クラウド人材不足が深刻化!求められるスキルと雇用機会の可能性とは?
ーーCompTIA調査結果から見るクラウドマーケットの現状と課題ーー
 
急速に普及しつつあるクラウドコンピューティング。その一方で担い手となる人材のスキル不足が懸念されており、クラウド活用の障壁となりかねないという。はたして企業は、そして個人はどう対応すべきなのか。2015年1月30日に開催された「CompTIA人材育成サミット2015」から、CompTIAのシニア・バイスプレジデントであるジョン・マグリンチィによる提言を紹介する。
 
クラウドの急速な普及に伴い、深刻な人材不足が課題に

クラウドコンピューティングの普及が世界を大きく変えようとしている。ITシステムのバック&フロントの両面に変化を起こし、働き方やモノづくり、サービスや流通の改革にまで影響を及ぼす存在になった。おそらく最終的にはあらゆるものがクラウドプラットフォームへと移行すると考えるのが自然だろう。

急速なマーケット拡大の中、クラウドサービス側では技術向上が進み、次々と新たなサービスが提供されている。また、クラウドのマネジメントやセキュリティ、データ分析なども重要な仕事になってきた。しかし、その両者において深刻な人材不足が発生しており、情報漏洩やサービスレベルの低下など様々な問題が懸念されている。

マグリンチィは「クラウドの普及によって新たな雇用創出が予想され、そのインパクトは大きい。しかし、急激な普及は人材不足につながり、様々な問題を引き起こし、企業のビジネスイノベーションをも停滞させる可能性がある。企業はクラウド人材不足のリスクを理解し、もっと危機感を持つべき」と訴える。

 
日本におけるスキルギャップと専門知識修得への意識

クラウドの普及に伴う人材不足の問題は、日本とて例外ではない。むしろ他国と比較してもスキルギャップが大きいという報告がある。

たとえば、内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)の調査によると、国内で情報セキュリティに従事する技術者約23万人のうち、14万人あまりにスキルが不足しており、潜在的に不足している約2.2万人と合わせれば16.2万人が不足していることになる。当然、クラウド活用の大きな障壁となるのは間違いない。


また、国別のスキルギャップの調査(図2)では、4つの新しいテクノロジー分野で日本が最もギャップが大きく、他国に遅れをとっていることが示されている。特にクラウド分野におけるスキルギャップは73%にも上り、単純に考えれば4人に3人がスキル不足というわけだ。

もちろん、企業側も手をこまねいているわけではない。CompTIAの調査によると、回答企業の約半数が「クラウドの専門知識を修得することは非常に重要」としており、「新たな発展を推進する」「顧客の需要がある」
「収益モデルの移行」などの理由を上げている。
また、IT部門でもクラウド活用を活性化するために、
「運用ポリシー変更」や「ツールの導入」、「新たな人材採用」など様々な取り組みを進めていることが明らかになった。

図2:国別のスキルギャップ
Global Tech Hot Spots: A country-level look at big data & analytics, cloud, mobile and social(IBM Business Tech Trend)3-NOV-2014
http://ibmcai.com/2014/11/03/global-tech-hot-spots-a-country-level-look-at-big-data-analytics-cloud-mobile-and-social/

しかしながら、マグリンチィは「クラウド利用を推進するには、即効性の高い人材育成を具体的に考えるべき」と指摘する。はたして、どのような人材に対し、どのような取り組みが有効なのか。

 
もはや待ったなし!企業・個人は実効的なスキル修得を

まず人材不足が懸念されているITエキスパートについて、マグリンチィは「企業単位でのスキル修得はもちろん、業界や国全体での取り組みが不可欠」と語る。とはいえ、教育機関においてITスキルの修得や業界への就労を啓蒙することは、即効性に欠け、現実的ではない。長期的な働きかけを行ないつつも、やはり企業や個人のスキル修得に対する意識改革がカギといえるだろう。

その動因となるのが、「業務内容の変化」であり、「新たな雇用機会の獲得」だ。クラウドスキルを身につけることによって、企業の57%がこれまでの保守タスクから創造的な仕事へとシフトできるし、44%が新たな雇用対象となると答えている(CompTIA調べ)。また、クラウドアーキテクトやコンプライアンススペシャリストなど新しい職種として、高く評価される人も増えてきた。

つまり、クラウドスキルの修得によって、個人は強力なキャリアプランニングの武器を獲得することとなり、企業は企業価値を高め、競争力向上につなげられるというわけだ。当然ながらそこには客観的な評価軸が必要となり、体系化されたスキルセットによる資格取得が有効であることは間違いない。

 
忘れがちな「ビジネス部門スタッフ」へのクラウド教育

そして、企業におけるクラウド人材育成の“盲点”となっているのが、ITエキスパート以外の人々、すなわちビジネス部門スタッフだ。ITリテラシーの1つとしてクラウドスキルが業務にも求められ、セキュリティの観点からもクラウド利用のルールや考え方を徹底して理解する必要がある。
 
マグリンチィは「Rogue IT」と呼ばれる「企業でシステム部門を経由せずに導入されるクラウドサービス」の実態調査を紹介。きちんと承認を受けているのは54%にとどまり、34%が相談のみ、12%がほぼ未承認で勝手にクラウドアプリケーションを導入しているという。(図3)

こうしたリスクを回避し、クラウドの真価を企業が享受するためには、ITエキスパートだけでなく、ビジネス部門のスタッフにおいても、クラウドに関するスキルや知識を修得する必要があるというわけだ。

図3:IT部門のクラウド導入への関与(CompTIA米国本部調べ)
 
体系化されたスキルセットで「クラウド人材育成」を支援

クラウドスキル修得のニーズが高まっているといっても、対象や内容は複雑で多岐に渡る。誰がどんなスキルをどのレベルで修得すべきか、判断するのも難しい。そこで効率的かつ体系的に学ぶために「資格認定」が有効となる。

中でも非営利業界団体「CompTIA」が提供するIT資格認定は、法人を中心にワールドワイドで200万人以上に取得されており、世界基準の「スキルと評価」を手に入れることができる。この「資格認定」に加え、「教育」「政策支援」「IT業界への貢献」を柱として世界10拠点で活動しており、中立性を担保したグローバルな資格として広く認知されている。

クラウドスキルについても明確なロードマップが引かれており、ビジネス部門スタッフ向けにIT活用の基礎となるスキルを体系化した「IT Fundamentals」、ITエキスパート向けとしてITとビジネスの両面からアプローチした「Cloud Essentials」、そしてセキュアなクラウド環境の構築・実装と運用管理に必要なスキルを網羅した「Cloud+」が用意されている。また職務に応じて「Security+」や「Network+」など、クラウドに不可欠な分野を過不足なく学べるようになっている。(図4)


図4:「CompTIA」の認定資格ロードマップ
 
マグリンチィは、「『CompTIA』の資格認定の取得によって、誰もがクラウド導入・活用における事項についてより良い理解を持つことができる。そして個人にとってキャリアの土台となる」という認定取得者のコメントを引用して、『CompTIA』資格認定の即効性とメリットを強調。「あなた個人の、そして御社のクラウドスキル向上のために『CompTIA』の資格認定を上手く役立てて欲しい」と語り、講演を結んだ。