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「<特別対談>組織力向上を目指したキャリアパスとスキルの可視化」:Part2





  
2011420日付のニュースリリースで株式会社ラック、(ISC)2 JapanCompTIA日本支局の3社は、組織力向上を目指した人材育成認証モデルにおけるパートナーシップを締結いたしました。今回この3社により「<特別対談>組織力向上を目指したキャリアパスとスキルの可視化」と題し、現在のITセキュリティの問題点やキャリアパスのご提案、また今回のパートナーシップ締結のねらいなどについて対談いたしました。

今回は、対談のPart2です。
過去の対談については、下記のリンクをご参照ください。

<ニュースリリース:2011年4月20日付>
組織力向上を目指した人材育成認証モデルにおけるパートナーシップを締結
~株式会社ラック、(ISC)2 Japan、CompTIA日本支局がパートナーシップ締結を発表~



<バックナンバー>
「<特別対談>組織力向上を目指したキャリアパスとスキルの可視化」
Part1 : リテラシの維持とセキュリティ構築の発想の転換


企業力の強化のためにキャリアパスを考える
 
CompTIA日本支局 支局長 清水秀彦(以下:清水)
CompTIAの認定資格は、ベンダー側、ユーザー側という視点で見たとき、米国、日本の両方でベンダー側の取得者が中心です。ただ、米国では、企業がお金を出して取得させるというより各個人が取得しているケースが多いようです。米国では、スキルは個人のものという考え方が根強く、認定資格は、個人のスキルを証明するものとして使われているケースが多いからです。一方で、日本は97%の受験者は企業側が受験費を負担して社員に受験を促しているケースが多いようです。

 
(ISC)² 日本 代表 衣川俊章氏(以下:衣川氏)
そうなのですね。認定資格の役割としては、本来は、ベンダー側だけではなく、ユーザー側に資格という可視化できるスキルをもつ人がいることが理想なのではと思っています。DoDの事例では、ユーザー側であるDoD内部で自分たちの「情報」という財産を守るために認定資格を通じて人材育成に取り組んでいるところに非常に大きな意義があると思います。ITを取り巻く状況もどんどん変化をしている中、クラウドの導入やITガバナンスなどユーザー側の企業がきちんと内容を理解し、常にコントロールできるという環境を作り出す必要があるわけです。
 
清水
そうですね。今後のクラウドなどの環境を考えた場合、日本国内だけで調達をする必要がなく、自社でハードウェアは持たず、サービスも含めて海外から提供を受けるという形も増えてきます。そのような状況下では、ベンダー側にとっては、海外のサービスプロバイダーと競争をする上で、ワールドワイドで認識されている認定資格を取得しているということは差別化の一要因となれるでしょう。また、ユーザー側にとっても、認定資格を取得していることが適切なサービスを提供してくれるベンダであると見極める上で重要な要因となりえます。
 
株式会社ラックセキュリティアカデミー 支配人 与儀大輔氏(以下:与儀氏)
一方で、ユーザー側で認定資格の取得を推進していくためには、資格を取得している個人のインセンティブにつながるような社会形成も必要だと思います。日本の場合、まだまだ終身雇用がほとんどのケースだと思うので、資格の取得のメリットが他国と比べて感じにくい場合があるかと思います。資格を取得することが、今後の自分自身にプラスの武器になるという意識が個人にも企業にも必要ですよね。
 
衣川氏
ええ。インセンティブモデルを作りづらい要因として、キャリアパスモデルが確立されていないということがあります。そのため、今回のパートナーシップの目的の一つでもありますが、キャリアパスを提案していくことも必要だと考えています。モデルがあることで、人材の登用や配置も人事部側で基準を持つことができるでしょう。こういったことを一つずつ整備していくことにより、人材育成をする企業側の認識も高まるでしょうし、個人としては、例えば、自身の目指すキャリアの中でどのようなスキルや資格が必要かの認識ができるようになっていくでしょう。以前に、アパレル企業でのITセキュリティを担当されていた女性の方が、CISSPを取得されたことで、某大手証券会社のITセキュリティ部門に転職されて活躍されているという事例がありました。決して転職を進めているわけではありませんが、業務経験を積み、資格を取ることによってキャリアとして飛躍された良い事例だと思います。
 
清水
日本ではまだまだキャリアパス、イコール転職という図式を思い描いてしまう人が多いのですが、先程のように、他業界の方が、知識やスキルを身につけることによってIT業界で働けるようになるという話は良いケーススタディとなると思います。
 
衣川氏
ただ、転職を考えているために、資格を取得しようとしている人が多くいることも事実だと思います。難しいことですが、資格取得というキャリアアップをして転職するという風潮がよくないこととしてとらえられてしまっているというのも事実かもしれません。ただ、反面、認定資格を取得された方を中途で採用した場合に、企業にとって非常に貴重な人材になるということもあります。資格を取得している人が、市場では価値があることが証明され、中途採用の際にも、資格保有者の方が有効だということを企業が理解されていて、一方で、社内では人材育成プランを作り、中途で採用された方とも同等に戦える人材を育成していくといった相乗効果が理想だと思います。
 
与儀氏
以前にCISSPを日本国内で紹介する際に、よくワインのソムリエ資格を例にしていました。レストランに行った時に、資格を持つソムリエとワインのうんちくを語れるボーイとどちらにワインを選んでもらいたいかと聞くと、皆さんソムリエを選びます。このように、知識やスキルを持つ人をきちんと可視化して、それを仕事に結びつけていくことが重要だと思うんですよ。また、レストランの観点から言えば、効率的に適切なアドバイスをできるソムリエを自分の店に雇うことは、経営面からも顧客サービスの面からもよいことですよね。実際に、某航空会社が、客室乗務員の方にソムリエ資格を取得させて、差別化をはかろうとしていました。
同じようにIT資格でも、まずは企業競争率を上げるため、今回のキーワードである「組織力」をあげるために資格を取らせるという観点が必要ですよね。

 
 
Part3に続く

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