CompTIA Japn
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image 第5回 各IT資格の役割と業務から発想する目的 image
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  【PDFバージョン】  
ベイクレストケアセンターは、国際的に認められている高齢者の健康管理と研究のリーダーです。トロントの18エイカーの施設では、一日に2500人以上を診ます。
●背景
2000年の初め、ステフェン タッカー氏はベイクレスト社のシステム・オペレーショングループの責任者に就きました。このグループは、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークと電話システムの責任を担っています。ネットワークは900人以上の使用者に対し1000台以上のPC、約50台のサーバーとかなりの数のプリンタで対応しています。システム・オペレーションの6名のスタッフは、仕事熱心ですが、ITの技術と経験が不足していました。この技術の差は次の重要な三分野で問題が明らかになりました。

ネットワークのダウンタイム
ネットワークの問題は頻繁に起こりました。例えば、2000年の2ヶ月間で、ネットワークは19回ダウンしました。ネットワークの平均ダウン時間は約1時間半で、典型的な解決策は、単にサーバーを再起動することでした 。
ヘルプデスクサービス
ヘルプデスクサービスはうまく機能していませんでした。電話をかけてもたいていはボイスメールでしたし、スタッフの問題解決の技術は、センター内のユーザーをサポートするには不十分でした。このため、ヘルプデスクへの電話量は少なめでした。問題が起きた時に第一にすることは同僚に助けてもらうことでした。
スタッフの転職
いままで述べた問題でお分かりになると思いますが、スタッフの転職率は当然高いものでした。2000年以前の転職率は約50%でした。

上記のそれぞれの問題は、ベイクレスト社の収支に直接影響を与えました。ネットワークに問題が起きると、ベイクレスト社のスタッフの仕事は止まってしまい、患者の治療、スケージューリングと処置が中断し、ネットワークを正常に戻すのに時間が掛かりました。友人や同僚を仮のヘルプデスクとして利用するのは、明らかに非効率的な技術サポートでした。高転職率は雇用の為の経費を増やし、代わりの人材がいない場合、賃金の高い契約社員を雇わなければなりませんでした。

ステフェン氏がベイクレスト社のIT担当重役に就任したときの重要な任務は、これらの問題を解決し、システム・オペレーショングループを、ベイクレスト社の高品質にふさわしいレベルに上げることでした。

2000年以前のITスタッフはほとんどボランティアのようなグループでした。このためITをよく理解していませんでした。ヘルプデスクを効率的にするにはスタッフのトレーニングが必要なのは明らかでした。
●トレーニングと資格
ステフェン氏はITスタッフの技術を向上させるため、厳格なトレーニング・資格プログラムを制度化しました。そのプログラムはCompTIA認定資格の「A+」と「Network+」をモデルに構成されました。トレーニングの内容は、市販で入手可能なテキストを利用し、ベイクレスト社内で作成しました。実習ラボが設けられ、10台の古く余っていたPCが用意されました。トレーニングは昼食時の1週間、3回のセッションで構成されました。

CompTIA認定資格の出題範囲(ガイドライン)を元にトレーニングプログラムを作成することで、スタッフは仕事を効率的に処理するのに必要なことを学ぶことができるようになりました。また、資格の取得により、学習の効果を客観的に測ることが確実にできるようになりました。さらに、資格により、問題の理解、検討と解決に共通の方法を取ることが可能になり、コミュニケーションと協力を育みました。もう一つ重要な利点は、CompTIA認定資格は、無事資格を習得する者に明確な指針を与え、またベイクレスト社のITスタッフの能力開発への熱心な取り組みを示し、仕事への満足度を高めたことです。

ステフェン氏を含め全システム・オペレーショングループのメンバーは、トレーニングを一緒に開始しました。24週のコースで、「A+」と「Network+」の全てのプログラムを修了しました。18ヶ月間で全てのスタッフは「A+」の資格を取り、多くのスタッフは両方の資格を取りました。CompTIA認定資格はベイクレスト社にとって大きなプラスでした。


スタッフにどのように問題を解決するか理解させる必要がありました。問題解決を効率的に行い且つそれによる結果を理解させる必要があったのです。この必要性がきっかけとなり、ついには目標を達成しました。
●結果
この資格制度により、前述した全ての分野で問題が劇的に改善されました。

ネットワークのダウンタイム
ネットワークのダウンタイムは大幅に減少しました。今では年平均たった45分です。
ヘルプデスクサービス
ヘルプデスクが大幅に改善されたことが、電話量の増大でわかります。ヘルプデスクへの電話は月当たり300回から2,700回になりました。問題解決時間の平均も大幅に改善され、85分から15分になりました。
スタッフの転職
転職率は、約50%から実質0%に減りました。

カナダでは医療関係の従事者は公務員で、民間と比べると収入は低い水準です。トレーニング・資格の提供は、従業員に対する熱意を示します・・・トレーニングと資格に投資することで単に昇給する以上のものを得ています。
●結果と適正
質的にみて、プログラムは大成功でした。トレーニング・資格制度の導入の結果、システム・オペレーショングループはかなり高いレベルのサービスが出来るようになったのは明確です。同様に重要な事実は、費用削減と収入損失の排除の面から数字で測れる利益が、ベイクレスト社にもたらされたことです。ここではこの利益を計算します。使われている元データ、仮定、計算方法に関してはこのセクションの付録を参照ください。

ネットワークのダウンタイム
ネットワークがダウンするとベイクレスト社では2つの分野で費用が発生します。第一にスタッフの時間のロスです。900人の使用者にとってこれはかなりのものです。第二に収入のロスです。ネットワークがダウンすると、患者は予約ができず、医療サービスによっては提供が出来なくなる、などです。ベイクレスト社は、多くの順番待ちを抱え、限られた容量で運営されているので、収入のロスは後日取り戻せるものでなく、永久の損失になります。
  年当たりの時間 時間当たりのスタッフ費用 時間当たりの収入減 費用合計
資格制度前 166 $7,290.00 $12,250.00 $ 1,733,040
資格制度後 75 $8,676.00 $12,250.00 $15,694
正味節減額 $ 1,717,346

ヘルプデスクサービス
ヘルプデスクの仕事改善で、2点が明らかになりました。つまり電話量の増加と解決に掛かる平均時間の減少です。トレーニング・資格の制度化後のヘルプデスクへの電話量の増加は、このプログラム前後のベイクレスト社の抱えていた問題の数を指しています。費用節減額は、非トレーニング/非資格のヘルプデスクが問題解決に要したであろう時間と、トレーニング済/有資格のヘルプデスクが要した時間の差に因ります。
  年当たりの時間 時間当たりのスタッフ費用
月当りの総電話回数 300 2775
平均解決時間 1時間25分 15分
全ての問題解決に要した総時間 3,931時間 694時間
ITスタッフの時間当り費用 $22.50 $22,50
ヘルプデスクサービス費用 $88,453 $15,609
総節減額(年間) $72,844

転職の減少
転職率は様々な点で費用を発生させます。(1)ITの担当重役は、求人、面接などに時間が取られる。(2)新人従業員は、トレーニングとオリエンテーションに時間を費やし、また低い生産性から仕事をスタートし徐々に学習熟度を上げていかなければならない。(3)新しい採用を進める間、IT部は補充要員として契約社員を雇わなければいけない。
  転職率 年間人採用者 新採用者一人当り費用 総費用
資格制度前 50% 3 $12,514.00 $37,542
資格制度後 0 0 $12,514.00 $0
総節減額 $37,542.00
●結論
ベイクレスト社は、投資に対し驚くべく経済的利益を達成できました。全体として、ベイクレスト社のネットワーク、ヘルプデスクと転職問題に関する年間の節減額は、$180万以上でした。トレーニングプログラムの設計と実施費用は数千ドルもかからなかったことを考慮すると驚くべきことです。

価値の要約
●ROI分析
ベイクレスト社はCompTIA認定資格への投資の結果、驚くべき費用節減を達成しました。下の表は、ヘルプデスク費用と転職者に伴う費用の減少から捉えた、投資の償却を表しています。ネットワークのダウンタイム削減の費用節減は要した費用を考慮するとかなり多額で、ROIによる分析には不適切です。資格制度によるリターンを控えめに見積もったとしても、相当のROIが得られたことを示しています。

資格制度 投資一覧
投資 要因 内容 総額
マニュアル 市販で入手可能なテキスト $500
スタッフ 時間(人件費) 24週間で1週間当り3時間
@22.50 1時間当り
$1,620
IT担当重役時間 24週間で1週間当り3時間
@$64 1時間当り
 
CompTIA「A+」受験料 6試験 @ $93 $558
CompTIA「Network+」受験料 4試験 @$155 $620
総投資 $7,906
※受験料は米国の会員価格での購入です。

RIO分析
ROI(ヘルプデスク費用のみ) 921%
ROI(転職者に伴う費用節減のみ) 475%
償却
償却(ヘルプデスク費用のみ) 1.3 ヶ月
償却(転職削減費用のみ) 2.5 ヶ月
●付録 元データと計算式
この付録は、ベイクレスト社のトレーニング・資格制度による経済的利益の見積りに使われた元データと計算を説明します。

ネットワークのダウンタイム
年間総ダウンタイムは、2000年1月20日から2000年3月17日(42稼動日)の間、ネットワークは平均時間が97分で19回ダウンしたという記録を基に計算しています。1日の労働時間が8時間とすると9.1%の時間ダウンしていることになります。このパーセンテージを基に年間労働時間を1,820時間とし、年間約166時間のダウンタイムと見積れます。
スタッフ費用は2つの要因から成っています。ベイクレスト社従業員の労働時間損の費用(ベイクレスト費用)と、ネットワークを元に戻すITスタッフの時間(IT費用)です。ベイクレスト費用はネットワークのダウンの影響を受けた使用者の数で決定されます。ある特定の時間にネットワークに接続している使用者数を求めるため、「緊急返答要請メール」をベイクレスト社の全スタッフに送りました。36%が1時間以内に返答しました。これがネットワークダウンにより影響を受けるベイクレスト社の使用者の割合です。使用者900人で平均1時間当たりの費用は$22.50とし、ベイクレスト費用は1時間当り$7,290です。この費用はトレーニング・資格制度の導入前後で同じです。トレーニング・資格制度以前のIT費用は0と仮定しました。これはネットワークのダウンタイム費用を過小評価していますが、ネットワークのダウンの対応サポートが最低限だったことを考慮すると理にかなっています。今のベイクレスト社はネットワークのダウンに対してずっと効率的に対応しており、時間当たり$38.50で36時間のITスタッフ時間を要します。ですから1時間当りのダウンタイム費用は、$1,386です。
時間当りの収入減は、1時間当りのダウンタイムで70%の患者が影響を受け、患者当たりの平均料金は$250、これによるベイクレスト社内の見積りです。ベイクレスト社では平均で1時間当たり70人の患者を診ます。
ヘルプデスクサービス
ヘルプデスクサービスの質が悪ければ、ヘルプデスクへの電話量は減ることになります。従ってトレーニング・資格制度の導入の前後での電話量と費用のフェアな相対的比較は、トレーニング・資格制度導入後に電話量をこなしたときの費用と、トレーニング・資格制度導入前に同じ電話量を受けていたとして要したであろう費用との対比になります。ここでの仮定は、トレーニング・資格制度の導入後の電話回数は、トレーニング・資格制度導入前のベイクレスト社の抱える問題の概数を正確に反映しているということです。
経費節減はヘルプデスク スタッフの生産性の改善によるものです。トレーニング・資格制度導入前では1回の電話の解決時間は85分、導入後では15分でした。
ヘルプデスク費用のみで、ヘルプデスクの悪い業績が与えたベイクレスト社全体の費用を見積りに入れていないので、節減は過小評価されています。
全ての数字は、ベイクレスト社内の記録からです。
スタッフの転職
転職費用は3つの要素から成っています。
(1)ITマネジャーが採用、面接などに費やす時間、
(2)ロス時間(オリエンテーションなど)と”新採用者”による生産性の減少
(3)補充要員の契約社員の雇用。
”新採用者”当りに費やす16時間のITマネージャー時間。ITマネージャーは時給$64です。各”新採用者”一人当り、マネージャー時間で測ると$1,024費用がかかります。
新採用者はトレーニングとオリエンテーションで、3日かかります。50%の生産性で3日間、80%生産性で16週間。この合計は20.5日損です。時間当り$22.50で、合計で$2,880です。
平均的ベイクレスト社の各新採用者に対する3週間の契約社員は、時間当たり$65で、3週間で$7,800です。
転職合計費用は、”新採用者”当り$12,514です。

このケーススタディーは、ベイクレスト社、CompTIAとコトラーマーケッティンググループで開発されました。コトラーマーケッティング グループは技術、トレーニング製品とサービスのビジネス価値の分析を専門に行っています。
第7回 顧客支援センターを運営するITサービス企業A社での導入効果
第6回 Value of CompTIA -信頼性保持に関する調査-
第5回 ベイクレストケアセンターにおけるトレーニング・資格制度の価値の適性(費用対効果)
第4回 日本におけるIT実務能力基盤調査報告について
第3回 各IT資格の役割と業務から発想する目的
第2回 CompTIAという団体のお仕事-その2 業界団体として
第1回 CompTIAという団体のお仕事−その1・スキルスタンダードとCompTIA